2017年12月9日

小箱

1年の終わりの特別な季節。
瞬間を刻印した、小さな記憶の箱をひらくたび
新しい時間は異星での出来事のように煌きだす。

12月のテーマはクリスマス。
思い返すと、バースデーのようにクリスマスも
大きめのイベントが思い出されることが多いと思います。
だけど不思議なタイミングで心に浮上してくるのは、ほんの小さな記憶。
時間を重ねるたびに、記憶の小箱はふえていく。
そして、あるタイミングで解けるようにひらかれるのです。

私のクリスマスの小箱を、2つひらきます。

子供の頃、私はだいぶ大きくなるまでサンタクロースを信じていました。
クリスマスツリーを飾り、ベッドのヘッドには靴下を。
24日の夜にケーキを食べて25日の朝、靴下にはキラキラのお菓子たち、
部屋にはプレゼントとカードが置かれていました。
ある年の12月のはじめに友達の家で遊んでいると
友達のお母さんが、私たちに言いました。
「あなたたちはサンタクロースが大好きだから、彼に手紙を書いたら?」
ドキドキしたことを覚えています。
グリーンランドとフィンランドのサンタクロースに手紙を書くのです。
砂糖菓子のような可愛い街並みの上を、サンタクロースが飛んでいる姿を
思い浮かべながら、心を込めて英語でプレゼントのお礼を書きました。
友達の部屋が、窓からの光でピンク色に染まっていたことや
赤と白のキャンディーケインが今でもあまく香ります。

20代の終わりのクリスマス。
別れが苦手な私が、大切な友達を見送ることになりました。
空港に行くと、待ち合わせのカフェに友達の姿はない。
チェックインしているのかと、席に着こうとすると
カフェの店員さんが私の名前を呼び、手で視線を誘導されるまま振り向くと
そこには、私の好きな白いラナンキュラスの花束。

別れの苦手なもの同士、クリスマスに泣き顔を見ても仕方ないから
もう行きます。寂しすぎて空港まで呼んだのに、ごめんなさい。
なかなか帰国できないけれど、心のまま理解してくれたあなたは
いつも一緒です。
婚約おめでとう。メリークリスマス。

無駄なものが消えて、削ぎ落とされていくと
今という時間だけが残る。
今の中で蘇る小箱は、時間が惜しいと思えるほど
その時を生きていた小さな証です。

クリスマスまであと2週間。
薄く発光した雲の群れと南国の美しい影。
どうしたって伝わっていく心の動きを
星をつなげるように確認していく。
そんな1年の終わりです。

tsuki