2016年6月10日

魔法的 – 小沢健二が向かうところ

magical

小沢健二のツアー『魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ』が梅雨前線のごとく全国を駆けぬける6月。7つの新曲と、従来のレパートリーの中から選ばれた「魔法」にまつわる曲たちを、サーカス団のようなRock & Magicalなバンドをバックにオザケンが歌う、歌う、歌う。

その昔、蓮實重彦との対談で村上龍が村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を評して「ハルキさんはたぶん小説じゃないことがやりたいんだ」というようなことを言っていたのが印象的でしたが、まさにこのツアーで「小沢健二は音楽じゃないことがやりたいんだ」と思いました。いや、正確に言えば、小沢健二は音楽的アプローチから離れたところで音楽がやりたいんだ、ということです。

ことツアーに関して言えば、2010年の『ひふみよツアー』、2013年の『東京の街が奏でるツアー』、そして2016年の『魔法的ツアー』と、3年おきに非常にコンセプチュアルなステージのライブを突発的に開催し、そこでは選ばれし目撃者たちのみがこぢんまりとした旅団として動員される。これはまさに映画のような周期で、例えばコーエン兄弟の『True Grit(2010年)』『Inside Llewyn Davis(2013年)』『Hail, Caesar!(2016年)』とぴったり重なるわけです。

3年かけてひとつの世界を消化していく、しかも閉じられた世界で。新しい曲を作るけど、ライブで演奏するだけでレコーディングはしない。だからそれを目撃した人の記憶には刻まれるけど、痕跡は残さない。このネット&ソーシャルの時代に逆行するような大道芸こそが今の小沢健二であり、そこで流れる小道具としての音楽はいつかフォークロアとなる。小沢健二はもしや現代のグレートフル・デッドになろうとしているのでしょうか…。まさか、ねぇ。

でも、いいですよ、新曲、とっても。

Jake