2018年7月8日

暑い夏にダラダラ読みたい海外文学5冊

西日本の水害がひどすぎて、ニュースを見るたび心配しております。被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。一日も早くすべての人に安心して眠れる日が訪れますよう。

 

今年は夏がずいぶん早く来てしまって、どうしましょうと少し驚いています。

 

元々暑いのは好きな方でしたが、年々辛くなる感じがするのは歳のせいなのかなんなのか。

 

さて今回は頼まれてもいないんですが、勝手にこれからが本番の暑さにむけて、暑い夏に読みたくなる海外文学5冊をわたし個人の独断と偏見で選んでみました。

一般的に選ばれる夏の本とはだいぶ違っていると思いますが、同じの紹介してもつまらないですしね。

 

というわけで、早速まず1冊目はこちら

アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』須賀敦子訳 河出文庫

毎年夏になると、それもうだるような暑さで息もできないほどになってくると特に読みたくなるのがタブッキ。

個人的に好きな作家はと聞かれればタブッキと答えるほど好きなので、夏に限らずいつでも読みたいですが、それでもいつがベストかと問われれば断然夏。

どれを読んでもいいけれど、せっかくなので最近文庫になったこちらをご紹介。

ポルトガルの西、大西洋を少しいったところにある群島。アソーレス諸島とその周辺に住むクジラを題材にした短編集。

島で伝え聞いた話や、捕鯨のこと、アソーレス諸島に向かう船の上の男女の会話、捕鯨の法規などなど、捕鯨とそれをめぐる人々のことを中心とした短い話が納められている。

でもただの記録などではもちろんなくて、捕鯨の生々しい命のやり取りが肌で感じられる文章は鳥肌が立つほどだし、そのすべてに詩があり、須賀敦子の翻訳は素晴らしい。

ただ短編集だからタブッキ入門にぴったりかというとそうでもなくて、実は2冊目とかに勧めたい一冊なので、読んだことないという方はぜひ『インド夜想曲』か『レクイエム』か『ダマセーノ・モンテイロの失われた首』あたりを読んで気に入ったらぜひ!という感じです。

 

2冊目は

アンナ・カヴァン『氷』山田和子訳 ちくま文庫

単純に涼しくなれそうと思って選んだ一冊。

地球規模の気候変動により氷で覆われていく世界。とある少女を追って冷たい世界に入り込んでいくわたし。

これ、なんかすごいんです。なんでってはっきりとは言えないんだけど、全編通して、凍てつくような寒さがじわじわとせまる様子が、読んでる者の心にも少しずつ浸透していく。

最初から最後まで登場人物が何者なのかもわからないし、答えもない。でもラストある種のカタルシスを感じてしまうという。

不思議な一冊。

これ寒い冬に読んでももちろんいいです。

 

3冊目

ジェラルド・ダレル『虫とけものと家族たち』池澤夏樹訳 中公文庫

楽しい本を一冊。

50年以上前に書かれた本だけど、今もなお楽しめる。

ギリシアのコルフ島という島でひと夏をすごす家族の物語。

主人公ジェリーは著者の小さい頃だそうで、ほぼ実話だそう。

ファーブル昆虫記を思い出しました。

ジェリーは生き物全般を愛していて、なんでもかんでも家に持ち帰ってしまう。カササギや巨大カモメやヘビや犬たちが巻き起こすドタバタに、ギリシアののどかな人たち、それにかなり個性的な家族たちの毎日が本当におかしくて笑ってしまう。兄の性格ひどすぎ。でものどかで可愛くて可笑しな一冊。

 

4冊目は

パトリック・モディアノ『八月の日曜日』堀江敏幸訳 水声社

2014年のノーベル文学賞を受賞したモディアノの1986年の作品。

こちらは堀江さんの訳だからなのかモディアノの持ち味なのか、文体そのものがスタイリッシュで洗練されていて素敵。

 「南十字星」というダイアモンドに関わった男女のうちの女が行方不明になり、断片的に立ち現れる記憶をたぐりよせながら探してゆく物語。

謎解きの要素が多いし、文章も会話が多いのでとても読みやすいけれど、内容はなかなか明かされない登場人物の素性や、すべての謎が解けていくわけじゃないところなど、すっきりとはしない。

でもそれが良い。

気づいたらどっぷりパリの通り沿いの雰囲気にはまって抜け出せないような気分になります。

 

最後はこちら

チャールズ・ブコウスキー『町でいちばんの美女』青野聰訳 新潮文庫

ブコウスキーの愛のあるダメダメっぷりがとても好きです。

真夏にこのダメっぷりを味わいたいとどうしても思ってしまいます。

カリフォルニアの酔っ払いのどうしようもない日常を切り取った短編集。

でもどうしようもないけれど、読んでるとものすごく生々しく切なくなってくる。自分に当てはめてみても共感する部分などないのだけど、この感覚はブコウスキーの本だけのもので不思議です。

ブコウスキーってでたらめなようでいて、実はものすごく繊細な人だと思います。そうじゃないときっとこの文章は書けない。

もしかしたら読んで嫌悪を感じる方もいるかもしれないけど、内容の向こう側にある悲哀を感じ取っていただけたらなと思います。

 

長くなってしまいましたが、今回は何も考えず自分が暑い日に読みたい本を選んでみました。

 

暑い日に本なんか読みたくないー!と思うかもしれませんが、汗をかきかき冷たい飲み物を飲みながら物語にのめり込むのもなかなかいいものです。

よかったらぜひ試してみてくださいね。

sakai