2016年9月9日

オールドデリーのチャイ屋

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「忙しい」と書いて、「心を亡くす」と読むのです……と、そんなことは百も承知なので、とにかく最近は忙しいことを考えないようにしていました。
自分のルールとして、「夜は仕事をしない」と決めているので、それを守ることができているだけでも、十分余裕がある方だとは思うのだけど、あれもこれも、やらなくちゃいけないことが日々溜まっていくにつれて、部屋は散らかり、机の上は書類が積み上がり、お客さんなどとても呼べないような状態になっていきます。

断捨離と言う言葉はあまり好きではなく、本来の意味を離れて、ただ「捨てる」ということばかりが強調されている風潮に、むしろ嫌悪感さえ覚えてしまうのだけど、今の自分には、「必要なもの」「要らないもの」の間に、「とりあえず放っておいて、後でじっくり考えるもの」というカテゴリーを作っても良いのかもしれないと思いました。
必要か、要らないか、慌てて決めようとするから結局決められなくて、ただ焦る気持ちだけが取り残されていくのなら、とりあえず「後で考えるもの」というボックスにポンポン放り込んでいく方が、少なくとも、目の前が片付いていいのかもしれません。

そんなことを考えながら、今は九段下のスターバックス。
約束までの3時間を、原稿5ページ書いて過ごしました。
所用が終わったら、靖国神社を散歩して帰ろうか。
ずいぶん色が浅い初秋の空を眺めながら、アイスコーヒーを飲み、もうそろそろホットコーヒーの季節だなと、思考があちこちへ移り変わります。

写真は、インドのオールドデリーにあるチャイ屋。
わたしはここが本当に好きで、どれくらい好きかというと、45度の炎天下、人混みで大混雑の熱気あふれるオールドデリーで、人をかき分けながら這ってでもこの店を訪れ、あっついチャイを「あっつー!」と言って飲みたいくらい。
サングラスのおじさんは、多分とても若いのだろうけれど、わたしがこの店を知った数年前からこの風貌で、北インドにしては珍しく、南インド風のまろやかで濃厚なチャイを淹れてくれます。
どんなに外気温が高くても、彼は火の前に立って1杯ずつチャイを淹れる。
365日、それは途絶えることがありません。
原稿を書くために使った資料を片付け、ぬるくなったアイスコーヒーを飲みながら、彼の丁寧な所作を記憶のそこから掬い出し、彼は今、まさにこの瞬間も、あの店の入り口に立ってチャイを淹れ続けているのだろうか、と思いました。
スパイスがそれほど効いていなくて、そのぶん、濃厚なミルクの味が強い、彼独特のチャイを思い出していたら、失ったと思った心が少しずつ手元に戻ってくるような感じがしました。

オールドデリー

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hiro