• TOP
  • 記事一覧
  • わたしの胸に生えて抜けない『うたかたの日々』

2017年5月27日

わたしの胸に生えて抜けない『うたかたの日々』

 

今月のテーマ『植物』にちなんだ一冊。

 

個人的に植物をテーマにした本はとても好きなので、それこそ図鑑から小説まで幅広くいろいろ紹介したいものがあって、どれにしようかとても楽しく悩ませていただきました。

 

悩んだ末、一冊決めたのがこちら。

 

ボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』 伊東守男訳 ハヤカワepi文庫

amazon

純粋な恋愛小説ってこの歳になってくるとまあめったに手に取ることはなくなって、江國香織も村山由佳もちょっと読むのが気恥ずかしいという感じなのですが、この本はそんなわたしの中にすごく残っている歴とした恋愛小説です。

 

ただその形は普通ではありません。

 

夢見がちな青年コランと美しく繊細な少女クロエは出会ってすぐに恋に落ち、そして結婚します。

しかし、その幸福もつかの間、肺の中で睡蓮が成長していくという奇病にクロエが取り憑かれてしまいます。

 

え?

肺の中に睡蓮??

 

とちょっと大多数の方のお顔にハテナが浮かんでいるところが思い浮かびますが、でもそのままの意味です。そういう病気に蝕まれてしまうのです。

 

それは憂鬱病の一種と取ることもできますが、物語の中では本当にクロエの肺の中の睡蓮は大きくなっていきます。

 

とても不思議な小説です。

読んでいるとどんどん深みにはまっていくのがわかります。

文章そのものが恋をしているように、生き生きとしていて、ストーリーは決して明るいわけじゃないのに、なぜか心がウキウキしてきたり、ときめいたり。

 

そしてもしあなたが音楽、特にジャズが好きだったら更におすすめです。

 

ときどきデューク・エリントンの曲や、スタンダードナンバー “ラブレス・ラブ“ の演奏シーンなどが出てきて、またその使い方がものすごくお洒落でうならせる。

ヴィアン自身がほぼプロのジャズトランペッターなので、音楽は小説のそこかしこにきらめいて色をつけています。

 

あらすじを書いてしまうと非常に荒唐無稽な話なのですが、全体的に会話がウィットに富んでいて、文章もキュート。そこかしこにユーモアが隠れていてまさにジャズそのもののような小説です。

 

ってなんだかキーワードが音楽になってしまいましたが、まあ肺に睡蓮が生えるという小説は世界広しといえどこれだけだと思います。

 

5月ももう終わりますが、もうすぐ始まる梅雨を受けて緑はさらに青さを増していきます。

雨の日に、お部屋でこんな粋な恋愛小説はいかがでしょうか。

 

こんな感じ、、、かどうかわかりませんが、small happy thingsのイベント「The Door To India」でもインドの本についてたくさんたくさんおしゃべりしたいと思っています。

わたしだけが話すような堅苦しい会ではなく、みんなでワイワイと雑談しながら好きな本について話そうよというコーナーにしたいと思っていますので、ぜひぜひどなたさまもお気軽にご参加ください!みなさまに会えるのを楽しみにしています。

sakai