2017年7月22日

天辺の雨 同じ雲の下

20年ぐらい前の話。

姉妹のような、ほとんど一緒に暮らしていた友達がいます。
今は、お互い海外で暮らしているからあまり会えない。
カフェにいると、素知らぬふりして隣に座って私が驚くのを待つ彼女。
私の恋のことで、酔っ払って椅子を蹴飛ばして泣きわめく彼女。
同じ歳だけど愛しい妹のような人。
10代の頃から、あらゆるときめくことを一緒に試した友達でした。

私たちはその頃都心で暮らしていて、都内をぐるぐるぐるぐる忙しく、
遊んで働いて、学びつつ、笑っては泣き、叫んだり。
いい大人のようで、2人でいるとまるで子供でした。

彼女は、私の暮らすマンションに溶け込んでいました。
私よりもリラックスしていて、泳いでいるような澄んだ寝顔も懐かしい。

そんな私たちには、ある儀式がありました。
そのマンションの天辺に上り、イヤホンから流れる
各々の選ぶ爆音の中に立ち、東京を眺めるのです。
理由やタイミングは、なんでもよかった。
東京タワーや高層ビル、首都高にレインボーブリッジ、
遠くには横浜のベイブリッジ。
日の出も夜景も、雪が東京に吸い込まれていく様子も、
流星群や真っ青な空に飛行船が飛んでいる日も。
私たちは別々に、丸い星に立っていることのわかる、
円状の東京を眺めていました。

当たり前のように一緒にいられる時間が、最後の日。
私たちはやっぱり、天辺から雨の東京を眺めました。
視界が傘で遮られるのが嫌で、お揃いのレインコートを着て、
グレーのしっとりした雲から降りてくる雨粒に打たれ続けました。

「今まで出会った人たちがこの見えている景色の中に無数にいて、
 きっと私たちが一番最初にこの雨に触れてるね。
 同じ雲の下で生きてるって幸せだね。」

あの頃は、いつか別々の国で暮らすなんて考えもしなかった。
そうだね、同じ雨を感じられることは幸せだった。
その気持ちを知っているから、離れていても幸せなのかもしれない。

過去と未来を携えて、今を生きる私たち。
あの日の雨の余韻を、夢を見るように今も思い出します。

 

tsuki