2017年8月17日

真夏の夜の鶏肉。

鶏肉って、庶民の味方だ。

牛肉に比べて我が家の食卓に登場する頻度はとても高いし、良質なたんぱく質がたっぷり摂れる。皮の脂の臭いがちょっと気になるけど、剥いてしまえば気にならないし、カロリーだって控えめになる。

 

と、思っていた。つい先日まで。

そんな私の認識を一変させてくれたのが、先日食べた骨つき鶏もも肉。
提供してくれたのは、六本木駅からすぐのお店『酉ひで』だ。

『酉ひで』は、今年4月にオープンした鶏料理専門店で、その看板料理が「骨付もも一本焼き」。専門店の看板料理とくれば、さぞ自信をもって提供されているのだろうと思いきや、オープン以降好評だったこちらのメニューを「もっと美味しくできるはず!」と、開店わずか3カ月で味のブラッシュアップに踏み切ったのだとか。

鶏の美味しさを追究する姿勢に、食べる前からへぇ、と感嘆の声が出た。

 

実はこの日は、関係者向けの試食会。
ちょっとしたご縁がありお誘いを受けたので、暑気払いになるねと、喜んで参加させてもらうことに。
席につき、骨付きの鶏もも、と口の中で繰り返しているところへ、まず運ばれてきたのは瑞々しいグリーンのサラダ。これは?と問うと、鎌倉近郊の契約農家から直送された鎌倉野菜のサラダだそう。

背後に山を背負い海に向かって開けた鎌倉は、土壌が肥沃で野菜の栽培に適している。
かつ東京に近いため、他の生産地と比べてもとくに新鮮な野菜を供給できる。生産者の意識も高く、「鎌倉野菜」のブランド力は、近年急上昇中だ。
そんな鎌倉に住むこの店のオーナーが、地元の野菜の美味しさに惚れ込み、提供することになった。『酉ひで』の、もうひとつの看板だ。

 多品種栽培を旨とする鎌倉直送らしく、その日ごと入荷する野菜のラインナップは微妙に変化する。来店のたび、目新しい野菜を楽しめるというだけでも、なんとなく嬉しい。
この日登場した「鎌倉野菜とパクチーのサラダ」「鎌倉野菜のバーニャカウダ」は、いずれもたっぷりの野菜をシンプルに味わう料理。素材の味に自信があるからこそのメニューだなと舌を巻いた。

 

さて、本題に戻ろう。鶏肉である。

サラダに続き登場したのは「二種刺身の盛り合わせ」。
むね肉ともも肉の刺身に、この日は砂肝のおまけつき。朝引きの京地鶏と博多地鶏の刺身は独特の弾力があり、肉そのものの甘みが口いっぱいに広がってムム、とうなり声が出る。

 

そしてお待ちかねの「骨付もも一本焼き」が登場!

その肉質に定評のある鳥取のブランド鶏「大山鶏」のもも肉を、骨付きのままスパイスに漬け込み、オーブンでじっくりと焼き上げたメニューだ。美味しそうな焦げ目と脂のテリも美しいまるごともも肉が銀色のプレートにのって運ばれてくる様子は、それだけで期待が高まる。スタッフは目の前で肉を切り分けながら、

「切り分けた後の骨のきわに残った肉が美味しいので、かぶりつくのがおすすめです。もちろん切らずにまるごと召し上がっていただいても結構ですよ」

とニッコリ笑顔で話してくれた。

 ちなみにこの骨付肉は、皮ごとの本当にまるごと一本。
自分では、普段食べずに捨ててしまう皮――なのだが、一口食べて驚いた。

気にしていた脂臭さがない。生産者がしっかり手をかけて育てる地鶏は、皮に余計な脂身がついていないからだ。それに、脂そのものに臭みがなく、むしろ香ばしく旨みを感じる。鶏油をかけながら焼き上げているので、皮全体がパリパリと軽やかな歯ごたえで、スパイスと鶏油の合わさったなんともいえないかぐわしさ。一気に噛みしめると、地鶏ならではの引き締まった肉から、肉汁が一気にほとばしる。これは美味しい!

気づいたら、プレートの上に残っていた骨まで、しっかりとしゃぶり尽くしていた。この香り、このジューシーさ、なかなか魔的。なお、骨付き肉の後を追うように小さな俵むすびが登場、プレートに残った肉汁と鶏油に浸してどうぞ、という趣向なのだが、いわば大山鶏の旨みが溶け出したエッセンスそのものをいただく訳で……あえてその味についての言及は控えたい。ひとことだけ言うなら、圧倒的な罪の味!

 

「骨付もも一本焼き」をガツガツと食べ尽くして、その美味しさにやや呆然としたところへ「鎌倉野菜と大山鶏のしゃぶしゃぶ」が登場。品のある昆布だしにサッとくぐらせた鶏肉と野菜のスッキリとした味わいで、ようやく心が正気に戻った気がした。

試食会ということで、この後まだまだデザートまで登場。
女子好みの甘味をしっかり研究したラインナップに感心しつつも、この日のインパクトは、やっぱりあの骨付もも肉に全部持っていかれちゃったなぁ、と笑いが漏れた。

吟味した素材にきっちり手をかけた料理をいただく幸せ。

できることなら、次はぜひ、容赦なく丸ごと一本かぶりつきたい。ぜひ。

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keiko