2017年8月24日

夏の本

気づけばもう夏も終わろうとしているのでした。

 

暑さはまだまだ厳しいものの、ふと吹いてくる風や虫の声など、少しずつ秋の気配が漂っているような気がします。

 

夏が完全に終わってしまう前に、今月のテーマ “夏“ の本をまだご紹介していなかったので一冊選んでみました。

 

夏におすすめしたいと思う本はものすごくたくさんあって、ストレートに夏の本というのもいっぱいあるし、課題図書になるような本や、海やアウトドアの遊びの本、はたまた怪談などもいいかもしれません。

そんな中に戦争の本というのがあります。

 

わたし自身はそんなにたくさん戦争についての本を読んでいるわけではないのですが、偶然読んだ一冊がとても素晴らしかったのでこの機会におすすめしたいと思います。

 

『八月の青い蝶』周防柳 集英社

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これは原発が落ちる前の広島で、出会う2人の若者の恋愛小説です。

若者と言っても男の子の方は少年で、年上の女性に恋してしまい、その恋心が本当に素直に描かれています。

 

物語は現代、余命わずかの父親の残した謎の蝶の標本と恋文とも呼べないほどのメモ書きを家族が発見するところから、過去に遡っていくという形で始まります。

 

その父親が主人公の少年、亮輔なのですが、広島の街でのびのびと素直に育っていく様子が、本当にみずみずしく描かれています。

 

そんな中彼は年上のキエに出会い、自然に恋に落ちていきます。

2人の交流の様子が亮輔の目線で無邪気にまっすぐとらえられていて、読んでいるものの心をぎゅっとつかんでくるのです。

 

物語の日常は戦争であり、それ自体は非常時。けれども、その中でたしかに人々は生きていて、毎日どれだけの人が死んでいったとしても、まったく頓着しない無邪気さでそこには恋もありました。

 

そういうところを本当に丁寧に、みずみずしい文章で描き出していて、気がつくと主人公たちにこころが移って、思わず力が入ってしまう自分がいました。

 

たしかにとても悲しい物語なのですが、同時にそのとき生きていた人たちの美しさもしっかりとうつし取っているところがとても好きなところです。

 

読み終わると、戦争の辛さや虚しさはのこりますが、それでも何か涼やかな風が吹いていくように感じます。

夏の終わりにぜひおすすめの一冊です。

sakai