2017年9月9日

圧倒的祝福の中響く麦ふみの音

 

『音楽』については本当に語り尽くせないほど多くの時間、この身をひたしてきました。

 

人生の半分は音楽について考えていたと言っても過言じゃないほど。

そのわりには何も極められておらずフガイナイ気持ちもあるのですが。

 

実はわたしの中で本と音楽の相性は、あまりいいものではありません。

バンドやミュージシャンのインタビューはたいがいつまらないし、評論家の御託も興味なし。

音楽をテーマにした小説はいつも恥ずかしくなるほど青臭いし、エッセイのたぐいはたまに当たりがあるものの本当に稀。なので意識的に音楽関連の本はさけているところがあります(あくまで一個人の感想です)。

 

でも、文章に音楽が感じられる本というのがときどきあるのです。

その代表的なのがいしいしんじさんが書くもの。

いしいさんの本は、いしいさんのからだの中を流れている音楽が自然にあふれ出てきているような文章で、読んでいて心地よい、、、わけではなく、むしろ心かき乱されます。

それがときどきどうしようもなく自分の心の奥の方まで入り込んできてしまい、ひたひた、ひたひたとからだ中に浸透していきます。

その体験は恐ろしいです。

でも読むのをやめられない。

 

読書をすることはときにかなりの痛みをともなうものだったりします。

それなのにそこにどうしても戻ってしまう。

なんでかはわからないけど本能的なものが動き出す、そんな文章があるんですね。

 

いしいさんの本はまさにそういう本です。

 

『麦ふみクーツェ』 amazonは題材も音楽という1冊で、今までいしいさんの本を読んだ事がないという方にもおすすめできるいしいワールドに足を踏み出すにはうってつけの物語です。

 

ちょっとこわいと思ってしまった方もこれならすんなり読めるんじゃないかと思います。

 

ある夏の夜、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞いて目覚めた僕と、その音の持ち主 ”クーツェ” との出会い。”ねこ” と呼ばれる僕がさまざまな人に出会い、人生の悲喜を味わいつつ本当の音楽とは何かということに目覚めていく。

 

あらすじを書いてしまえばつまらないけど、じっさいにページをめくれば想像もしなかったほど豊かな世界がそこに現れます。

 

ひとつの闇、ひとすじの光、なんてことない毎日、そのすべてにこれ以上ないほどの音楽があふれて、祝福のリズムを刻んでいます。

 

秋の夜長、少し夜更かししてもいいかなというときに、ぜひじっくり腰をすえてページをめくってほしい一冊です。

 

 

sakai