2017年11月3日

青いパパイヤの香り

言葉になる前の心の音を、いつも自分だけは知っている。
私は私という内なる環境に何よりも影響を受けている。

ヨガや瞑想の時、そして日常の中で、静の中の動、動の中の静を
心の片隅で意識しているような気がします。
映画を観ている時も、このシーンは静の中の動を見つめている、
なんてことを無意識に感じていることに気がつきました。

The Scent of Green Papaya(青いパパイヤの香り)を随分昔に見た時
その感覚がひときわ強くなったことを覚えています。
ベトナム系フランス人の監督、トラン・アン・ユンはサイゴンを舞台にしながらも、
全てフランスで撮影したことを知った時は信じられませんでした。
映画の中では、常に微細な物音、虫の声、鳥の声、水音が美しく漂い、
移ろう光や影、主人公ムイの額に光る汗さえも、南国を再現している。
アジアの気候や、植物たちまで見事に顕していたのは、
彼の母国への想いが生み出した世界なのかもしれない。

少女のムイが女性になるまでの、無垢で聡明な瞳。
丁寧に仕事に命を込め、人生の途中の悲しみも連れて
瞳の色は深くなっていきます。
彼女の視線の窓から覗いた世界は、いつも躍動的で美しい。
まさに静の中の動を、ムイを通して感じているような時間です。

器の中で小さな水音を立てている魚には、料理をしながら話す
小さなムイの密やかなかわいい声がどんな風に聴こえていたんだろう。

今月のSmall Happy Thingsのテーマは「映画」。
自分とは別の世界を疑似体験しながらも、
どこか自分の世界とリンクしている。
心の履歴が細胞の中にインプットされているように
心の音を私がいつも聴いていることを、時々映画が思い出させてくれる。

ハワイのパパイヤは、ベトナムのものより丸いけれど
ムイのようにリズムよくナイフで叩き刻んで、今夜はソムタムを作ろうかな。

tsuki